金剛瑜伽女

チベット語：ドルジェ・ネルジョルマ
梵語：ヴァジュラ・ヨギニ

渦巻く炎の光背の中央に、生首の首飾りや骸骨の冠、骨の飾りを身に着け、蓮の上の日輪座に横たわる屍の上で舞うこのカンドマ（ダーキニー）は、若い女性の魅力的な容姿を持ち微笑みを浮かべながらも、開いた口からは尖った犬歯をのぞかせ、逆巻くオレンジ色の髪、大きく見開いた三つの眼というように、激しくも魅惑的な姿で描かれています。

頭頂には黒い猪の頭部、右手でティグ（肉切り包丁）を振り上げ、左手には血で満たされた骸骨杯を胸前に持ち、その肩にはカタム（カトヴァンガ）と呼ばれる杖を立て掛けています。

様々な姿で描かれるヴァジュラ・ヨギニですが、本タンカに描かれているのはゾクチェン・サンワ・ニンティクで観想されるヴァジュラ・ヨギニの姿で、主尊ヴァジュラ・ヨギニの頭上、積雲に虹と共に現れているのは”グル・リンポチェ”の変化身の一つ、僧形の”グル・デワ・チェンポ”です。

高精細複製画の購入が可能です。

制作年：2011年
サイズ：53×77cm

＜基底材＞
綿布、チョーク、陶土、膠液

＜彩色画材＞
藍銅鉱、孔雀石、本藍、緑土や黄土、純金泥など

恐ろしくも魅惑的な女尊・金剛瑜伽女を描いた本タンカは、本藍、緑土や孔雀石（緑青）を使い柔らかな色調で背景が描かれてあり、空白を残すことで広がりを持たせるカルマ・ガディ派の特徴的なタンカです。その為に一見スッキリとした印象を受けますが、全ての細かい部分がには時間をかけた詳細が精緻に描き込まれていて、見れば見るほど新たな発見があり惹き込まれる作品です。

経典に記されている肌の”赤色”、髪の”オレンジ色”は数種類の赤・黄系の色を混色して作った落ち着いた色を使い、逆に陰影を付けるボカシには彩度の高い色を使うことで、輝きを持たせながらも派手にならないような工夫がされています。

遠くに薄らと望む雪山、岩場を流れ落ちる滝や、蓮の花が咲く湖などを通して遠方から手前に流れる川、様々な木々や草花で飾られた背景には、花の咲き乱れる丘の夫婦鹿や岩山の洞窟で瞑想をする密教行者、水辺から尊格を見つめる鶴、色鮮やかな鳥などが細密に描かれています。

高精細複製画の購入が可能です。